「トモダチコレクション」と「禁忌」
部屋の掃除をしている時に見つけたニンテンドーDS専用ソフト「トモダチコレクション」は、私に掃除を中断させるほどの魅力なんて無かった。
大して仲のいい人がいなかった私にとってこのソフトの思い出なんて無いようなもので、思い出せるのは起動した瞬間孤島に聳え立つマンション。
確か中身は架空のハゲでいっぱいだったかな、僕は昔からハゲが好き。
というわけで適当にゲーム類をまとめていた棚にぶん投げて、終わり。
────の、はずだった。
掃除を終え、一息つこうと開けたゲーム棚の一番上に積まれていたトモダチコレクション。
それを見てふと思った、思ってしまった。
「そういえば、あの島かなりおかしいよな」
小さな小さな孤島の真ん中にでっかく佇むマンションと、それを囲うように建つ小さなショップ達。
マンションには沢山の住人がいて、日替わりでショップの店員を務めている。
住人達は他の住人宅にお邪魔したり、寝たり起きたりを繰り返し。
楽しそうだね。
しかし、マンションの住人は全て私達プレイヤーが「造っている」のだ。
プレイヤーが造るマンションの住人、通称「Mii」は顔の作りから身長・体重・声のトーンや人格まで自由自在。
どれも現実の人間とはかけ離れているけれど。
そうやって生き物としての全てをいじくり回されて造り上げられたMiiは、新生児などの期間を吹っ飛ばしいきなり私たちにどことなく不自然な日本語で話しかけてくる。
特に勉強や成長も無く、生まれてすぐに私たちから与えられた食べ物を食べたり勝手に運動したり他のMiiとおはなしするのだ。この狭い孤島で。
勿論彼らはゲーム内の電子的存在であるし、深く気にする必要は無いのだけれど。
好きな相手に「告白」して、
「カップル」が生まれたり、「失恋」をしたり、
悲しさから「家出」をする。
────こんなの、人間と同じじゃないか。
いや待て。
もし彼らが「人間」として作られているならば、それは禁忌ともされる「クローン」実験のそれに非常に近い行為ではなかろうか。
彼ら彼女らは自分を「Mii」だと自覚しているのだろうか?
人間の真似事をして、電子の中で生き続ける彼らは一体何を思っているのか?
もしかして私達は、この小さな孤島で人類の禁忌ともされる「クローン」の実験もどきをゲーム内で続けていたのではないか?
恐ろしい。
恐ろしい。
これ以上考えたくもない。
「トモダチコレクション」というタイトルが悍ましいものに感じる。
気持ちが悪くなってゲームソフトをゴミ箱に投げる。が、狙いが悪く薄い音を立てて床に転がるゲームソフト。
私達は知らないうちに幼い頃からクローンの擬似実験を行なっていたなんて。
「トモダチコレクション」の売上は2012年1月時点で約367万本(出展・Wikipedia)。
つまり少なくとも367万人もの人がクローンの擬似実験を行い、たくさんのクローンを生み出してきたのだ。
このソフトを開発した任天堂は、裏でどんなことをしているのだろうか。
もしかしたら、既にクローンを生み出すことに成功しているのかもしれない。
「トモダチコレクション」は、現代人にクローンを親しみやすくさせるための作戦だったのかもしれない。
そこまで技術を持っていてもおかしくないだろう、だって天下の任天堂。
近い将来、もう1人の自分が目の前に現れるのだろうか。
もしそうなっても、私は割と冷静でいられるんだろうなぁ。
だって私も「トモダチコレクション」を経験しているのだから。
おお、ペコリンもそう思うか。
よしよし。